子どもに寄り添う名もなき仕事

今日は仕事の話題を離れて久しぶりに9歳の息子のことについて書きたいと思います。

息子のことは以前のブログにも書きましたが、→
やんちゃで好奇心旺盛で、欲求が強くて、頑固でわがままで、怖れを知らないチャレンジ精神の塊のような息子。

そして人一倍、かまってちゃんなので息子が工房に帰ってくると仕事が手に着かなくなるくらい騒々しい。
「ママおなかすいた」
「ママ宿題見て」
「ママお友だちの家まで車で送って」
「ママケガしたから手当てして」
・・・
と止めどなく続く、ママコールとおしゃべり。

夫とは離れて母子で暮らしているのでワンオペ事情は仕方ないとはいえ、母親にとって、何がつらいって子どもといると中断の連続が当たり前だから、仕事をしたり夕飯を作ったり当たり前のことが二人きりだとままならなくなる。

機嫌がいい時は愛嬌があって可愛いのだけど、怒ると手がつけられないほど激高する。
学校でもケンカが多くて、先生方やクラスの子達に迷惑かけっぱなしで先生や相手方の親御さんに電話して謝ったりすることもしばしば。
底なしのエネルギーを持てあましていて夜はなかなか寝ない。
学校の道具をあれこれ紛失・破壊するなど興味のないことには粗雑極まりない。
息子を寝かしつけた後はいつも疲れ果てて動くことができないほど・・・。

そんな息子、ちょうど2年ほど前の小1の3学期に近所の友達に教えてもらったのがきっかけで将棋にのめりこむようになりました。
もともと勝負事が好きで、死ぬほど負けず嫌いという性格が合っていたのか、寝ても覚めても将棋・将棋。
「好きこそものの上手なれ」という言葉の通り、将棋の勉強に没頭し、ものすごい勢いで棋力を上げていきました。
ちょうど私が石けんの事業を始めた頃から息子も将棋に夢中になり、その頃はまだお互いに没頭できることができて良かったのですが・・・

月日が経つにつれ、将棋を始めた頃とだんだんと状況が変わってきました。
今住んでいる地域の勝山だけの教室だけでなく、もっとたくさんの子達と対局したいと車で1時間弱の津山市の教室へも通うようになり、棋力が上がるにつれ大会参加で岡山市や倉敷市など遠方への送迎も多くなってきました。

特に今年の1月は息子がずっと目標としてきた大きな将棋大会が二つ。
息子がプレッシャーを抱えていたのを私も感じていたので、できる限りこの期間は重点的に息子のサポートに回ることにしました。

毎日の学校のことに加えて、食事や睡眠、日々の生活を整えること。
息子がいつも解説してくれる棋譜を私も分からないなりに「うん、うん」と聞き、将棋教室や大会の送り迎えとお弁当作り、スケジュールを組み勉強する環境を整えること、息子と相談して将棋の本を選び、あとは見守り、泣いたら励まして、とことん付き合うこと。

前回の息子についてのブログにも引用した李昌鎬さんの、
「才能とは、家族の関心と愛を糧に育つ木である」
という言葉通り、子どもは親が愛情と関心を向けてあげたらそれだけ伸びる素質を誰しも持っている。

子どももいろいろなタイプがいるので、親が忙しそうだと諦めたり成長につれ気持ちを出さなくなる子もいますが、
うちの息子の場合はゴリゴリ主張してくるタイプ。

私が夕飯を作っている最中だろうが、仕事でパソコンに向かっている最中でも
「ママ!今、このネット対局を見て」とか
「宿題のこの漢字分からないから読み方教えて」
とかお構いなしに言ってくる。

今は無理だよという時もあるけど、可能な限り手を止めてそうした声に応えてあげると、息子はものすごく張りきる。
ネット対局している時は私が見ているだけで勝率も上がる。

正直そんな強引な息子につきあうのに参る時も多い。
でも自分の欲求に良くも悪くも貪欲なので、こうした周囲を巻き込むほどの強引さが息子が伸びる要因で、ある意味才能とも言えるかもしれないと最近思う。

そして大会になると驚くほどの集中力と勝負強さを見せる息子。

将棋を始めたのも決して早いほうではなく、まだまだ勉強も経験も足りないのですが、もともとの気質からか息子は大きな大会ほど120%のパフォーマンスを発揮する。

予選は大勢いても勝ち進むごとに人数は減り、決勝リーグに進むとお互いの持ち時間を使い切るくらいの熱戦が多くなる。

私は遠くから見守り祈ることしかできないけれど、一手一手、対局相手の手が息子の陣に伸びるたびに息子が頭を抱えて顔をゆがめると私も見ていて苦しくなる。
厳しい対局の後は息子はよく頭の右側が痛いと言う。

こんな大会が今月は2回もあり、両大会とも息子が目指していた順位までは届かずでしたが、他の県代表相手に自分の力を出し切り、本当によくがんばったと思う。

いつも対局を終えると息子はチラッと私の方に目をやる。
そして勝った時は私の目をまっすぐに見て小さく頷く。

先日の大会でも長い苦しい対局を終えて真っ赤な顔で息を切らせて席に戻ってきた時に
「ママと勉強した横歩取りで勝てたよ!」
と言われた時には、戦法書を見ながら息子の勉強につきあってきた後だったので思わず涙してしまった。
単純な私は、こんなはじけるような息子の笑顔を見た瞬間に日頃の疲れも一気に解消されたような気分になってしまう。

もしも息子が対局を終えて私を見た瞬間に私がスマホでも見ようものなら、息子は心底がっかりして次の対局に差し支えていただろう。

自分の時間も関心もすべて息子に注いで、目をそらさずに祈りながらただただ見守る。
その話を仕事のパートナーのmiyukiちゃんにしたら、
『そうなんだよね−。母の仕事の大半がそうした「名もなき仕事」なんだよね。』
と言われてはっとした。

本当にそう。
子どもに寄り添いただただ見守る、
「ママ」と呼ばれた時にきちんと向き合うことも、
泣いて癇癪起こしている我が子をなだめるのも、
子育てにまつわる多くが
「名もなき仕事」なんだ。

そこには多くの母たちの自己犠牲による時間とエネルギーが費やされているにも関わらず、評価も報酬も発生しない。
何かに没頭している子どもが不安になってふと振り返った時に母親と目が合う。
そうした小さな積み重ねが、子どもが不確実な外界でがんばれる安全基地を築いてゆく。

そんな「名もなき仕事」はどんな仕事よりも尊いんだと最近ようやく気づいた。


振り返ると今月はほとんどブログを書けなかったし、石けんもいつもの月の半分も製造できなかった。
でも、こんな息子に身を捧げる時間があってもいい。
ずっと傍若無人だと思っていた息子も、最近は重たい荷物を持ってくれたり、石けんのパッキングを手伝ってくれたり優しさを見せるようになってきた。
子育てにはものすごくエネルギーを割かれるけど、がんばる息子にいつも励まされる。
これからも二人三脚で支え合っていきたい。

 

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