幸せなものづくり〜みんなの声でつくる和ハッカ藍石けん〜

盛夏のような暑さからようやく梅雨らしい気候になった今日この頃。
工房前のラベンダーが例年よりも早く咲き始めました。

岡山県の山間にあるMATSURIKAの工房では夏季限定の和ハッカ藍石けんの製造に大忙しです。
小さな石けん工房は今、爽やかな和ハッカの香りで満たされていて深呼吸すると鼻からスーッと抜けるような清涼感に満ちています。

和ハッカ藍石けんの準備に取り掛かるのは販売の2ヶ月以上前から。
時間がかかる理由は石けんの上に散らす飾りの透明石けんを作るためです。

市販のレンジで溶かすだけの透明石けんもありますが、そうした石けんはお肌にやさしくない成分も含んでいたりするので、こだわりのオイルから手作りしています。


透明石けんは藍で色付けして、濃紺、紺、青、淡い水色と4色に色分けして作り、それぞれを手作業で切り分けていきます。
細かく切ってくれたスタッフ達に感謝!

この透明石けんがすべて出来上がるまでにおよそ1ヶ月。
おまけに原材料の値上げも相次ぎ、手間もコストもどうなの?と正直思うのですが、キラキラと光るモザイクガラスのような石けんを見ていると、これから来たる酷暑を乗り切るために、この涼し気な透明石けんはMATSURIKAの商品として絶対必要なんだと改めて思う。

日々のご自愛って、五感を喜ばせる美味しいものや香りだったり、こんな小さな石けんのきらめきだったりするのですよね。

透明石けんができあがったら、いよいよ製造開始。
少しずつ色を変えたブルーのグラデーションを重ねるのは時間との勝負なので3人がかりで行います。

色違いの層をひとさじずつ丁寧に重ねて、最後に透明石けんを散らしていきます。

年々暑くなる夏にお客様からの要望もあり、今年は新たな試みとして、ハッカを強くしたバージョンの石けんを作りました。

ハッカの精油を増やせば清涼感は出るのですが、強アルカリの石けんに入れると精油成分は揮発しやすいため、スースーとした清涼感を出すためには相当の量のハッカ油を入れないといけません。

近年の異常気象により毎年仕入れている倉敷と北海道の無農薬の和ハッカの生産者さんのハッカ油も減少傾向の中、揮発しやすい石けんに大量に和ハッカ精油を入れるのは、香りも強すぎてしまうしエコではありません。

そこで安定した清涼感を出すために、今回採用したのがハッカ脳とも呼ばれる「メントールクリスタル」。
ハッカの葉を蒸留して得られるl-メントールの結晶として取り出したもので、肌にふれるとひんやりとした感覚を得られます。

このメンソールクリスタルを溶かして石けんに入れると確実にスースーした清涼感を得られる石けんになるのですが、問題がツーンとした強い香りと、多量に入れすぎると肌にヒリヒリとした刺激となってしまうこと。
つまり、メントールを入れすぎると香りもツンツンして和ハッカ精油の上品な香りを邪魔してしまい、肌にも刺激となる石けんになってしまうのです。

厚生労働省の「化粧品に配合可能な医薬品の成分」によると「l-メントール」は粘膜に使用されることがない化粧品で洗い流すものには100g中7.0gまで、粘膜に使用されることがあるものは100g中1.0gまでと配合上限が定められています。

石けんは顔を洗う時に、まぶたの粘膜や皮膚の薄い唇など敏感な部分にも触れてしまいます。
だから慎重に何度も何度も試作をして、その度に使用感を記録してスタッフ達の意見も参考に配合量を調整していきました。

肌が丈夫なスタッフはハッカを強くしたバージョンが爽快感があって好みで、一方でアトピー持ちのスタッフは従来のスースーしない和ハッカ藍石けんの方が肌に優しく香りも良いとのことで、意見が見事に二分しました。
うーん、、、みんながいいと思う商品を作り上げるって本当に難しい。。


左が従来の使用感がマイルドで香りが良く、右がメントールを増量した清涼感が強い石けん。

私は顔を洗うなら従来の肌に優しい和ハッカ藍石けんのほうが甘く品のある香りの良さも感じられて好きです。
こちらは透明石けんが天然石のように美しく、和ハッカの繊細で甘く清涼感のある香りに、ラベンダーのフローラルさをブレンドした香りが秀逸です。

ただ猛暑日はメントールを強めた和ハッカ石けんは湯上がり後もひんやり感が持続し爽快です。
アトピー等で肌バリア機能が弱っている人にとってはメントールは肌がヒリヒリする強い刺激となってしまいますが、肌が丈夫な人にとってはスーッと汗が引く爽快感も欲しいところ。

もともとMATSURIKAの石けんはアトピーや敏感肌の人にも香りや色を愉しみ、心から癒やされてほしいという思いから作りあげた石けんなので、当初に開発した透明石けんを散らしたお肌にマイルドな和ハッカ藍石けんも残したいという気持ちが強くあります。

肌質の違いや、住んでいる地域の暑さによっても選ぶ石けんは違ってくるはず。
2種類出して気温によって使い分けたり、顔用と体用と使い分けするのもいいかもしれない!
そんな風にスタッフ達と何度も話し合いを重ねて、今シーズンは試験的にメントールの量が違う数種類の石けんを販売してみることにしました。

メントールを強めた透明石けんをのせていない石けんは藍の色を少し濃くしてみました。
こちらのグラデーションも涼しげで海の波がゆらめくような美しさです。

こうした経緯から、今シーズンは和ハッカ石けんお試し3個セットをお得な特別価格でご用意したいと思います。
中央がマイルドな従来品のもので、両側はそれぞれメントールの量が違うもの。
皆さんのお声を聞いて最終的には2種類にしていきたいと思います。

商品に付けたQRコードから簡単なアンケートにお答えいただき、皆さんからのお声を更に今後の製品づくりに活かしていきたいと思いますので、ぜひ3個のお試しセットを使い分けながらこの夏を愉しんでいただけたら嬉しいです。

今回の石けんのリニューアルは本当に難儀したけれど、一人で背負わないで
「いつもMATSURIKAの石けんを愛用してくれているお客様と一緒に作ればいいんだ」と思ったら気持ちがふっと軽くなりました。

商品開発はうまくいかないことばかりで大変だけど幸せなこと。
農薬も搾取もない、生産者さんの心のこもった素材を使わせてもらい、「こんなものがあったら幸せだなぁ」と思えるものをカタチにして、私達がワクワクするものをつくると「それが欲しい」と言ってくれる人が必ず現れる。

この工房からそんな幸せなものづくりをすることが、商品にも伝わり、使う人が日々の中で、ほんの少しの心の豊かさだったり癒やしを感じてくれて幸せの連鎖となったらこんなに嬉しいことはない。

気がつけば和ハッカ藍石けんを作るのも今年で6年目。
こうしてお客様や生産者さんに支えられながら事業が継続できて、自分がいいと思えるものを作り続けることができることが本当に幸せなのです。

ひとりひとりの感覚や肌質、好みが違うのは当たり前なこと。
違うから面白い、違うからこそ一人ひとりの声を聞いてみたい。

すべての人には寄り添えなくても、
「この夏、この石けんがあって良かった」
暑くてしんどい夏に一人でも多くの人にそう思ってもらえるようなものづくりがしたいのです。

みんなでつくり上げていく、夏を愉しむ和ハッカ藍石けん。
アンケートの集計をもとに、シーズン後半の製造にも活かしていきたいと思います。

販売開始は6/30(日)の午後20時です!
MATSURIKAのオンラインショップ→☆をぜひチェックしてみてくださいね!

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