新年度が始まったと思っていたらもう5月も終わりですね。
一時期は真夏日のように暑い日もあり、工房でも急ピッチで夏限定のせっけんの製造を進めています。
キラキラと青い透明石鹸を散らした「和ハッカ藍せっけん」は見た目も香りも涼やかです。

MATSURIKAの石けんを使ってくださった方から、心あたたまるご報告をいただきました。
ひとつめは、MATSURIKA SAVONの石けんを保健室に置いてくれている東京の小学校の養護教諭の先生から。
「嬉しいご報告です。1人手荒れがひどくて、学校で手洗い禁止されてる子がいるのですが、彼女にマツリカの石鹸を保健室で使ってもらっているのですが、手が良くなったと本人がお母さんに伝えました。お子さんの言葉をお母さんが聞いて家でもマツリカの石鹸を購入したそうです。」

そのお子さんの話を聞いたお母さんが、我が子の“実感”を信じて、石けんを選んでくださったこと。
もともとは養護教諭の先生がMATSURIKAの石けんを保健室に置いてくれたことから始まり、毎日手洗いに来てくれるお子さんとその子を思うお母さん、その連鎖のすべてが、心に沁みました。
そして、もうひとつ。
「7歳の息子は普段から良い香りが好きなのですが、マツリカサボンさんの石けんを初めて使った時、「なんか心がすっとする感じでめっちゃいい匂い。大事に使う」と自分から話していて私も驚きました。
心のこもったお仕事をされているのが伝わり、石鹸を使うたびに、なんだか清らかな空気に誘われるようなそんな感じです。
今後も気持ちの切り替えに力を貸してくれそうな頼もしい石鹸です。」
この“なんか心がすっとする感じ”という表現。
子どもは、言葉よりももっと深い感覚で、何かを受け取っているんだなと改めて感じました。
MATSURIKAの石けんは、ただの“モノ”ではなく
目に見えない、気持ちや空気感をも包みこむ“カタチのある祈り”のようなものかもしれないと最近思う。
先日、アーユルヴェーダ専門家のMOTOKOさんの講座を受けたのですが、アーユルヴェーダでは「プラーナ」という言葉があります。
日本語でいうと「生命エネルギー」とか「氣」とか呼ばれるもの。
そこでMOTOKOさんが言っていたのですが、
「お母さんの握るおにぎりって絶対に真似できない味なんですよね。ごはんとお塩だけなのに握る人によって味が変わる」と、作り手のプラーナと呼ばれる「氣」とか「エネルギー」が入るからとのこと。
でもそれってすごく分かります。
私も蒜山の裾野から湧き出る塩釜の冷泉をいつも石けん用の水として汲みに行くのですが、どんなに体が疲れているときでもそこの泉に行き、水に手を触れたり飲むと体がすっと軽く元気になる感覚があるのです。

感覚過敏の息子も昔から塩釜の冷泉水が大好きで、小さかった頃は直接水場に口をつけてごくごくと飲んでいました。湧きたてが特に甘いのだとか。
まるで動物みたいですよね(笑)
そんな清らかな湧き水や生産者さんが心を込めた原材料を使っているから、敏感な人や子どもにはそのやさしさが伝わるようなのです。
実はこれまでに、石けん作りの途中で、レシピも温度も何もかも間違っていないのに、なぜか分離して固まらず失敗してしまったことが何度もありました。
あとで思い返すと、決まってそういう日は、心がざわついていたり、スタッフとの間で人間関係がぎくしゃくしていたり、必ず何か気が乱れていたタイミングだったのです。

石けんは作り手の気持ちを映す鏡のよう。
きっと油脂や香りや水が、私たちの心のあり方まで感じ取ってしまうのだと思います。
昔、趣味で石けん作りをしていたときは分からなかったのですが、今は本当にピュアないい素材と湧き水だけで作っているから、あの頃よりも良くも悪くも石けんに伝わりやすいと感じています。
だからこそ、石けん作りのときには「いい香りだね」「今日の色、すごく綺麗」と、スタッフ同士で小さな喜びを交わしながら、穏やかな空気の中で手を動かすようにしています。
植物からの贈りもののようなオイルや精油、蒜山の湧き水。
原材料のオイルもできるだけフェアトレードで農薬不使用のものを使用しています。環境負荷の大きいパーム油も使っていません。
その方が生産者さんと大地を守ることになるから。
それらの自然の恵みに、作り手の“まごころ”が重なって、やっとひとつの石けんが生まれるのです。

先日も、お客様から「石けんを使うたびに、なんだか清らかな空気に誘われるようなそんな感じがします」と言われて嬉しくなりました。
こんな風に、ただ汚れを洗い流すだけではない心も清らかにしてくれる石けんを作りたいといつも思う。

今日もまたどこかで誰かが石けんを使いながら
「なんか心がすっとした」
そんなふうに感じてくれたら嬉しいなと思います。
石けんは、だんだんと小さくなって、最後は溶けて消えてしまうもの。
ほんのひとときでも、MATSURIKAの石けんが誰かの“やさしい時間”になりますように。