保健室と子育てと石けんへの想い

前回のブログで、販売開始と石けんへのこだわりについて書きましたが、ふと、どうしてここまで石けんに思い入れがあるのかについて、書いていなかったなぁと、ひるぜんの石けんシリーズについて書く前に、私の石けんへの想いを綴りたいと思います。

今日は4月2日。
ちょうど4年前の今頃、東京都の保健室の仕事を辞めて真庭市への引っ越し準備をしていました。

私は幼い頃から、多分、生まれ持ったお役目のように

「疲れて元気がない人を助けたい」

という思いが本能的にあります。
小学校の頃からずっと保健委員として具合の悪い友達をお世話したり保健室に連れて行くのが仕事で、それがそのまま保健室の養護教諭という仕事になりました。

保健室の先生って、病院の先生や看護師さんとはちょっと違うのです。

お医者さんや看護師さんがいる病院には本当に具合が悪くなった人しか来ないのですが、保健室は生徒達の毎日通う学校、つまり日常の中にあります。
「ちょっと疲れた」
「ストレスが溜まってイライラする」
「悪寒がして頭が痛いから風邪気味かも」

そんな日常のちょっとした生徒達の不調を早めにキャッチして、話を聞いたりケアしてあげて、元気になって保健室を後にしてもらう。
そして何日か後には
「先生、すっかり良くなったよ!」と報告に来てくれるのも生徒のいつも側にいる保健室の仕事の醍醐味でした。
(生徒からの手紙、今でも宝物です)

私はこの仕事をいまだに天職だと思っていて、大変だけどやり甲斐のある仕事として結婚して出産するまでは仕事をバリバリとこなしていました。

そう子どもができるまでは。

子どもができてから、こんなに人生で思い通りにならないことがあるのかとつくづく思い知りました。

ワンオペ育児を大変だ、大変じゃないと言う人はそれぞれですが、少なくとも私は人生こんなに大変な思いはしたことがないという経験でした。
(今回の事業の大変さよりしんどかった)

うちの子は、人一倍手がかかる子で、疳の虫が強くて、夜も寝ない、とにかくかんしゃく持ちで、活発で多動で、思い通りにならないことがあると絶叫して毎回チアノーゼを起こして顔を紫色にしてぶっ倒れてしまうくらい、赤ちゃんの頃から自己主張が激しく非常に気の強い子でした(今現在も・・・)。

子育ての大変さは、子どもそれぞれの生まれ持った気質によるところも大きいと思うのです。

うちの子は乳幼児期にどこに連れて行っても「手がかかってお母さん大変ねぇ」と言われてしまう子で、おまけに私が養護教諭の知識から、テレビやスマホに頼らない、布おむつ、完全母乳、おんぶ育児、絵本を毎晩読み、食事もすべて手作りで加工食品は一切使用しないとか・・・完全にストイックな、今思うと自分で自分の首を絞めるような子育てをしてきました。

でも、がんばりすぎて気がつくといつも子どもが最優先で、自分自身をかまえなくなるのです。

日焼け止めなんて塗る間もなく外へ飛び出す我が子を追いかけなきゃいけなかったし、お風呂でも自分の背中なんか洗う間もなく子どもを洗い、そこらじゅうの床をびしょ濡れにするのを拭いて回ったり、くり返し汚す洗濯物、おむつ、食べ散らかした床、それらを原状復帰させるだけで一日が終わってしまう徒労感。

肌のケアなんてとる時間もなく毎日外遊びだったから、気づいたらシミそばかすが増え、美容院にも行けず、歯も痛み出し、ずっと使っていないマスカラはガビガビに乾燥して使えなくなり、、、夫は休みもなく帰宅も深夜で、ワンオペで孤独・・・そんな日々を過ごすと、自分が女らしく装うという気持ちもどこかへ行ってしまう。

どこへ行っても○○くんのお母さんと呼ばれ、子どもの話ばかり、私の存在価値って何だっけ?

子どものこと最優先するあまり、自尊感情がどんどん地の底へ落ちていく。
そして気がつくと自分が着る服、つける化粧品、美容院etc・・・自分にかけるお金をどーでもいいと思ってしまう。

でもね、自分に使うものをどうでもいいと思ってしまうのは危険なこと。
例えば100円の石けんでいいやと思うと、私は100円の価値しかないと知らず知らずのうちに自己暗示をかけてしまう。
すごくがんばっているのに、メイクや着るものもどうでもいいやと思っていると、どんどん自分を私なんてどうでもいい人間に思えてきてしまう。
少なくともかつての私はそうでした。

そして母親って、自分の愛情の水瓶が満ちていないと我が子に注げなくなってしまうのです。
だから、私も自分自身が空っぽなのに子どもに愛情を注ぎ続けるのがしんどい時期がありました。

仕事復帰してからはなおさら忙しすぎて、泣き続ける子どもをベッドに放置してトイレにこもって耳を塞いだり、イラッとして叩いてしまったり決して褒められた母親ではありませんでした。

そうして、子育てと仕事の両立に限界を感じていた頃に東日本大震災があり、息子の体調が悪くなったのを機に大好きだった保健室の仕事を辞めて、地に足着けた子育てをしようと岡山県北の真庭市に来たのが4年前。

もともとは石けん作りは趣味でずっと続けていたのですが、大きなきっかけとなったのは真庭の子育て広場でお母さん達に石けんをプレゼントしたのですが、後にその時のお母さんが話しかけてきてくれたのです。

「子育てで自分のことなんて全部後回しになっちゃうけど、この石けんで顔を洗っているときが香りに癒やされて唯一自分だけのご褒美の時間なの」
と何度もお礼を言われた時。

私が石けんを届けたい人はこういう人だ!って、その時にピンときて石けんを事業化したいと改めて強く思ったのです。

もともとはアトピーの生徒にも使える石けんをと思って作り始めたけど、石けんには人を癒やす力があり、アロマテラピーができない忙しい人にこそ、毎日使う石けんで取り入れるのが一番いい。

結局私は、子どもの頃も、学校の保健室時代も、化粧品製造業を立ち上げた今も、思いは一貫して変わらず、
「疲れている人、がんばっている人を癒やしたい」
つまりは、日常に寄り添うアイテムで人をホッとさせる愛と癒やしを届けられたらと思っています。

こんな思いを持っているときに、偶然にも同じように大変な子育てをしながらも石けん作りをしてきたパートナーの美幸ちゃんに出会えて、二人の思いがひとつになったのが今のMATSURIKAの石けんです。

多分お互い苦労している者同士じゃなかったらここまで仲良くなれなかった。

子育てが一番大変でつらかった頃に、私達が一番欲しかった石けんが今のMATSURIKA SAVONのもとになっています。
子育てに追われてメイク落としとか、化粧水とか肌のお手入れができなくても、これ1個で肌の状態が良くなる石けん。
化粧箱を開けるときに、バスルームに持っていくときに、気分がちょっとウキウキするような美しくて香りの良い石けん。

オーガニックやフェアトレードの原材料を使用しているので、どうしても1個3,000円近くしてしまう石けんは確かに高価だと思う。

でも一部の人への贅沢品じゃなくて、がんばっている人にこそ、自分のことなんて後回しと思っている人にこそ、
そんな私達の想いがこもった石けんを使ってほしいと思うのです。

先ほどの100円の石けんの逆暗示じゃなないけど、がんばっているあなたには1個3,000円の石けんを使う価値があると伝えたい。

がんばっている自分へのご褒美に、そして大切な人へのプレゼントに選んでいただけたらこんなに嬉しいことはありません。

保健室でしてきた日常の中でホッと人を癒やす仕事が、今もこうして皆さんが使う石けんという形となって、ひとつひとつ箱詰めされて世に出て行くのを待っています。

皆さんのお手元に届いて喜んでいただけるのを想像しながら、今日も製造や箱詰めがんばりたいと思います。

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