ローズ石けん開発秘話①〜奥出雲薔薇園を訪ねて〜

お盆を過ぎて、急に秋の風が吹き涼しくなりました。

今日は今開発中のローズの石けんについて書きたいと思います。

MATSURIKAの工房のある岡山県北の勝山は、もともと播磨国と出雲国を結ぶ、出雲街道の宿場町として栄えた町です。
今もなお風情のある宿場町跡が町並み保存地区として残っています。
遠い昔、この通りを多くの人たちが出雲国と播磨国を行き交っていたそうです。

この地に石けん工房を建てて製造を開始して、新作ラインナップを考えた時、かねてよりずっと、私の中にプレミアムなローズの石けんを作りたいという思いがありました。

バラは古来よりその効果効能は知られています。
ホルモンバランスを整え、エイジングケア、肌にハリと潤いを与えたり、精神面でも心を明るく高揚させ、ストレスの緩和など、あげればきりがないほど、その芳香成分だけでも素晴らしいパワーを持っているのです。

しかしながら、世に出回るローズの商品は、ほとんどが合成香料のムワッとくる不快な香りばかり。
ゼラニウムだけの香りで「バラの香り」とうたっている商品も多々。
私は養護教諭時代から長年アロマに親しんできたアロマテラピーインストラクター(AEAJ)なので、そうした香りはすぐに分かります。

本物のローズ・オットーの香りは高貴で甘く、うっとりするような多幸感のある素晴らしい香りなのです。
そんな本物のバラの香りを求めて、真庭周辺から中国地方にかけてバラ園を探していて見つけた奥出雲薔薇園(おくいずもばらえん)

もともとこの地に住むようになってから、勝山を通る出雲街道の先にある出雲国には何か不思議と惹かれるものがあり、薔薇園のホームページを拝見しただけで何かピンとくるものがあり、思いきって連絡をしてみました。

そして石けんの開発をするにあたり、できるだけ現地に足を運び、生産者さんの思いのこもった生産物を「石けん」という形にして消費者の皆さんにお届けしたいと思っているので、ぜひ薔薇園を見に行かせてほしいとお願いしてみました。

奥出雲薔薇園の福間社長はとても気さくな方で、お電話でお話しするうちにこちらの思いも通じて、すぐに薔薇園に見学に行かせていただけることになりました。

勝山から2時間半ほど車を走らせて到着。
ちょうど真庭に来訪した夫と一緒に見学に行かせてもらいました。
福間社長がていねいに薔薇園を案内してくれました。
およそ30年前から栽培をはじめたそうです。

奥出雲薔薇園のオリジナルの品種「さ姫」。
その名の由来は
「かくて堅め立てし、加志は石見の国と出雲の国との境なる、名は佐比売山(さひめやま)なり」
島根を代表する、三瓶山。この山はかつて佐比売山(さひめやま)と呼ばれていたとのこと。
香り高く多くの女性が魅了される薔薇を、神秘的な出雲の伝説の残るこの山になぞらえ「さ姫」と名付けたそうです。

その深紅の花びらが朝露に濡れたように輝いていました。

もともと虫に弱いはずのバラが、どうして農薬を一切使わずにこんなに美しい花を咲かせ続けているのか、福間社長に聞いてみたところ、無理に人工交配せずにゆっくりと長い年月をかけて自然交配させていったら、この土地の風土に合った病害虫に強い品種ができたとのこと。
まさにこの土地の風土が育てたバラの花。

花の色は鮮やかでありながら深く品格漂う深い真紅色。
植物色素のアントシアニンの色で、強い抗酸化力から食べても健康に良いバラだそうです。
そして、何より驚いたのはその香り。

今まで嗅いだことのある、ブルガリア産ローズなどの外国産の精油とは香りとはまったく違います。
あちらがゴージャスな魅力を放つ華やかな外国人だとすると、「さ姫」の香りは華やかさがありながらも可憐な美しさと奥ゆかしい気品溢れる和のバラの香り。
品がありながら、深呼吸したくなるような陶酔感と多幸感。
何よりも特徴的なのは花びらを食べてしまいたくなるようなフルーティーな甘い香り。
バラの香りは苦手と言っていた方達が、次々とこの「さ姫」の香りに虜になるというのも頷けます。

福間社長曰く
「忘れられないバラを作りたかった」
と仰るほど、一度嗅いだら忘れられないこの香り。

さ姫の苗を分けてくれと、海外などからお声がかかるそうですが、湿度の多い出雲のこの気候、この土じゃないとこの香りは絶対に出せないと仰っていました。

お話を伺えば伺うほど、この香りのために費やしている努力がすごいのです。

薔薇園を歩くと足が沈むほど、ふかふかな土。
無農薬の米ぬかが主な肥料だそうですが、甘い香りを出すために糖度が高い品種のお米を薔薇園の横で栽培されているとのこと。
バラの肥料のために米農家もするなんて、その徹底ぶりがすごすぎます!

虫の駆除もふかふかな土作りも、バラの剪定も、花を摘み取るのもすべて人の手で行っています。
会社内の工房では、摘んだバラの花びらを手作業ではがして、冷凍花弁にして保存したり、蒸留してローズウォーターやローズエキス、パウダーなどに加工しています。

国内でも希少な無農薬で素晴らしい香りの食用バラを原材料として商品化したいという声は多く、棚にはその商品がぎっしり。

「さ姫」はこれだけの加工食品や化粧品、レストランやケーキ店で使われながら、固形の石けんはまだ商品化されていないとのこと。
石けん製造時にアルカリと合わせると香りがとびやすいので、「さ姫」の繊細な香りを表現するのが難しいのだそうです。

福間社長曰く、別の香料でごまかして、違う香りなのに奥出雲薔薇園の「さ姫」の香りとうたってはほしくないとのこと。
こんなに「さ姫」の香りを守るべく、精魂込めて栽培していれば生産者として当然のお言葉です。

確実に香りを出すためには、「さ姫」の花びらを蒸留した精油(エッセンシャルオイル)をたっぷりと入れることなのですが、精油は10キロの花びらに対し、わずか1mlしか得られない貴重なもの。
石けん原材料としてそんな貴重なエッセンシャルオイルを大量に入れるなんてナンセンスです。

とれる量が少なすぎるとの高価な理由で、精油を取り扱っている商品はほとんどないとのことです。
でもなんとかこの神様が宿っているような素晴らしい香りの「さ姫」の石けんを商品化したい!

もともとうちの社名のMATSURIKAの語源はジャスミンの和名の「神からの贈りもの」という意味。

今までの、ひるぜんのヤマブドウ石けん(→☆)クロモジ石けん(→☆)だって、他所がやっていなくて絶対に無理だと何度も製造担当のmiyukiちゃんと失敗を繰り返しながら、最終的には素晴らしい石けんにできたんだから。

私の信条。

よそがやらないことをあえてやる

化粧品製造の工房を借金して建ててしまったり、オーガニックかつ色がきれいな石けんを作るために、オーガニックのオリーブオイルを400kgも自社分精製してしまったり(→☆)、私が今までしてきたことは決して人にはおすすめできないことばかりで、我ながら無謀すぎるとつくづく思う。

でもだからこそ、今までになかった美しいものをつくりだせる。
よそがやっていないからこそ、やる価値がある。

きっとこの神々が住まう出雲国の「さ姫」だって、神様からの贈りもののような石けんにできるはず!

福間社長と私が同じ理系出身で、良いと思えるものをとことん探求する気質が似ているところで意気投合。
ものすごく難しいハードルでありながら、なんとかこの社長さんに納得してもらえる石けんが作りたいと創作意欲がふつふつと湧いてくる。

そして奥出雲薔薇園を後にして、miyukiちゃんと私の試作の日々が始まったのです。

開発秘話②へ続く→☆

 

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箱あり・箱なしの石けんを出す理由

ローズ石けん開発秘話②〜「さ姫」の香りを求めて〜

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