石けん作りの原点〜食物アレルギー講演会に参加して〜

昨日は石けん作りとは違うお仕事で、お世話になっている地域のお医者様よりお声かけをいただき、真庭市民公開講座の講演後のフリートークに参加させていただきました。

テーマは「子どもの食物アレルギー:食事と管理」
講師は東京の昭和大学医学部小児科学講座の小児アレルギーエデュケーターであり管理栄養士の長谷川実穂先生。

最新の医療現場でのエビデンスに基づく長谷川先生の講演と、その後一緒にフリートークに参加させていただいた内科医の宮島先生のお話は、食事管理やアナフィラキシー、食物経口負荷試験のお話など、とても分かりやすくためになる内容で、私も前職のことを昨日のことのように思い出しました。

食物アレルギーとは、食べ物を体が異物と勘違いし、免疫反応が過敏に働いてしまう現象です。

本来安全であるはずの食べものを除去したり、日々気をつけなくてはならないのはとても大変なことで、ひとたび口にしたり粘膜に触れてしまうことで、呼吸器症状や皮膚症状、消化器症状、場合によっては血圧低下を伴うショックなど重篤な症状を引き起こすこともあります。

学校現場では重々注意していても、調理実習や給食・・・・当たり前に食材は子ども達の身の回りに溢れていて集団生活の場でほんのわずかな不注意から、お子さんにアレルギー症状やアナフィラキシーの症状が出てしまうことがあり、全身の皮膚が腫れたり喘息で苦しそうにしている子を病院に搬送するのは養護教諭の仕事とはいえ、いつも胸が締め付けられるような思いでした。

そして、かく言う私の息子も1歳を過ぎた頃に牛乳アレルギーと診断されました。
牛乳がわずかでも含まれているものを口にすると、蕁麻疹が出て目がお岩さんのように腫れて、痒がって火がついたように泣き叫ぶので、子どもの身の回りのものがすべて危険なように感じて、スーパーに行くと商品ラベルをつぶさに見ては「乳」という言葉が入っていないかいつもピリピリしていました。

自宅で乳製品を除去するのは比較的容易でしたが、保育園での生活が始まってからが大変でした。

きちんと園では個別対応していただいているのですが、皆とまったく同じメニューではなく、皆がクッキーを食べている日に、息子一人だけお煎餅だったりするので、
「ボクだけみんなと同じおやつが食べられない」
といつも言われるのが切なかった。

少しでも皆と楽しくおやつの時間を過ごしてほしくて、保育園の献立に合わせて、豆乳でプリンを作ったり、乳製品不使用のケーキやクッキーを作って持たせたりしていました。

今思い返すと、フルタイムで働きながらよくやっていたなぁと思う。
母親って子どもに何かあると、すべて自分の責任のように感じてしまうから必要以上にがんばってしまうのですよね。

石けんを作るようになったのは、もともと肌が弱かった息子のためと、保健室にいらしたアトピーの子の親御さんより、どの石けんもアトピーの子どもの肌に合わないという相談がきっかけでした。

アトピーのお子さんはもともと乾燥気味で皮膚のバリア機能が弱っていたり、肌に目に見えない傷があったりするので、オリーブオイルやシアバターなどで作られた石けんは、とても肌なじみが良く荒れた肌をやさしくケアしてくれます。

合成界面活性剤が入ったのシャンプーやボディソープも皮脂を落としすぎてしまい、余計に皮膚が乾燥し荒れやすくなるので痒みがひどくなります。
また保存料だったり、タール系や重金属系の色素、合成香料の入った石けんも、荒れた肌は敏感に反応してしまうことが多々あります。

MATSURIKA SAVONの石けんが、上質なオーガニックのオイルにこだわったり、オイルの良い成分を残すために時間のかかるコールドプロセス(オイルに極力熱を加えない冷製法)で作っていること。
天然の色や香りにこだわっていること。
どんなオイルが原材料か分からない石鹸素地を使うのではなく、極力アレルギー性の少ないオイルから手作りしていること。

化粧品や石けん業界の方に、MATSURIKAの石けんが7種類の石けんのオイル配合がすべて違うと言うと驚かれます。
たいていは同じ石けん素地のベースに香りや色の違いのみという場合が多いからです。

本当はその方がコスト的にも良いし、色や香りを楽しむだけならそれでいいのかもしれないのですが、MATSURIKAの石けんはそれだけではなく、肌質によって選べたり、ありとあらゆるアレルギーやアトピー、化学物質過敏症のある人でも使える石けんを目指しています。

先日、複数品目のアレルギーと化学物質過敏症を有する乾燥肌のお客様が、うちのラベンダー石けんと、ヤマブドウ石けんは肌に合わなかったけど、ピュアベビー石けんと酒かす石けんは大丈夫でしたとご報告をくださいました。

お客さんとお話しする中で推測したことは、ラベンダー石けんはキク科のヒマワリ油を使っているのが多分NGで、
ヤマブドウ石けんに使われているナッツ系のオイルのマカダミアナッツオイルがNG。
ピュアベビー石けんのホホバ油とオリーブオイル、酒かす椿石けんの椿油が肌に合うとお話しされていました。

また、赤みや炎症を伴うアトピーのお子さんの家庭からは、ピュアベビーよりも炎症を鎮めてくれるラベンダーの石けんも合うと聞いています。

昨日の講演会の後に、長谷川先生にこのような石けんのオイルでも、アレルギーの方に合う合わないがあるとお伝えしたら、そうした事例は海外でもあるとのことで、石けんは日々肌に取り込まれるので、本当に大事だとお話ししてくださいました。

こうしたお話を伺うと、7種類の石けん、それぞれ使用するオイルを変えて商品展開して本当に良かったと思うのです。

私の石けん作りの原点は、前職でアトピーやアレルギーの子達やお母さんが少しでもホッとして笑顔になれるようにと思ったこと。

入浴後に肌が乾燥するからと、がんばって全身に保湿剤とか塗らなくてもいい石けん。

安全だからと地味な石けんばかりではなく、香りや色を楽しめて、やさしい泡に癒やされて、皮膚がしっとりと潤い、皮膚本来の健康を取り戻すことを目指しています。

私が前職で養護教諭でなかったら、
息子がアレルギーでなかったら、
きっと生まれなかったMATSURIKAの石けん。

昨日の講演会の場でもお話しさせていただいたのですが、アレルギーのお子さんのお母さんは本当に大変です。
家でも外でも子どもの食べるものに気を使うことは、日々神経を尖らしていなくはならなくて、お友だちと一緒のものが食べられないので時にはおやつを手作りしたり負担が大きいです。

でもその一方でアレルギーの子どもに合わせていると、結果的に添加物の少ない食べものを選ぶようになり食への意識が高まったり、いいこともあります。

いつでもどこでもコンビニやファミレスに行けば好きなものが食べられる日本の食は一見豊かです。
でも、その裏で日持ちや食味をよくするための添加物や、安く大量に流通させるための農薬や遺伝子組み換え食品など・・・。

子どもからのメッセージにフォーカスすると、今まで知らなかったことが、たくさん見えてくる。

今では
「体は食べたものでできている」
という、当たり前のことに気づかせてくれた息子に感謝しているのです。

MATSURIKAのピュアベビー石けんは、泡立ちは他の石けんよりも控えめなのですが、赤ちゃんでも使えるようにオーガニックのオリーブオイルやシアバター、ホホバオイルなどを使用しアレルゲンとなり得る原材料を極力排除した無香料の石けんです。

言わばMATSURIKA SAVONの原点と言える石けんが、このピュアベビー石けんなのです。

今回の市民公開会講座を通して、お子さんのアレルギーやアトピーで大変な思いをされているお母さん方とお会いして、改めて原点に立ち返ることができました。
こうした貴重な機会をくださったY先生に心より感謝です。

これからも襟を正す気持ちで、必要としている人たちのために石けんを作り続けていきたいと改めて思うのです。

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