いろいろな方に、起業して、工房を設立して化粧品製造業・製造販売業を始めると伝えるとびっくりされる。
「石けんってそんなに厳しいの?家で作って販売しちゃだめなのー?」
と言われたりすることもあります。
なぜ、そんな会社や工房まで設立して、そんな難しそうな許認可を取得しなければならないのか?
それは肌に使う石けんが「化粧品」だからです。身体や肌に使う石けんを都道府県の医薬安全課の許可なしに製造販売していたら、医薬品医療機器等法(旧薬事法)違反に問われます。
化粧品は毎日肌から入るものですから、製造所や製造方法、保管や検査など、厳しい安全基準を満たしていないといけません。
自分用に石けんを作ったり、クリームや化粧水を手作りするのは良いのです。
でもそれを他の方にも安全に使ってもらえるものとして製造し販売できるのでしょうか?
石けんを家で作って化粧石けんではなく、「雑貨石けん」として販売している方はとても多く、ネットで検索するとその数は驚くほどです。
中にはきちんとした知識のもとに、素晴らしい石けんを作っていらっしゃるソーパーさんはたくさんいます。
ただ、一方で、残念ながらそうでない石けんもあります。
現に私自身、ネットで購入した手作り石けんで、苛性ソーダの強アルカリが石けんに残っていて、肌がひどく荒れてしまったことがあります。
そして、アレルギーや化学物質過敏症の問題もあります。
私は学校の保健室の現場で、ほんの微量でもアレルギー症状を起こしてしまう子ども達をたくさん見てきました。
アレルゲンの食物を食べていないのに、肌と目の粘膜に触れてしまったことで、でアレルギー症状が出てしまった生徒を病院に連れて行ったこともありました。
薬局で買った保存料や合成香料の入った石けんは肌が荒れてしまうけれど、無添加の石けんなら大丈夫という生徒もいました。
また、過去にニュースになっていましたが、人工的に加工した加水分解コムギを保湿剤として入れた石けんを毎日使い続けることにより、肌からアレルゲンが入り、ある日パスタやパンを食べたらアレルギーやアナフィラキシーショック症状を起こし小麦製品が食べられなくなってしまったという悲しい事件もありました。
アレルゲンや化学物質は、肌から吸収され蓄積するのです。
毎日肌に使う化粧品だから、石けんをつくって売るなら、許可を取得するのは自分の中でmustなことでした。
養護教諭の経験があるからこそ、そう強く思うのです。
人に幸せになってもらいたいものづくりにおいて、どこかで搾取が行われていたり、環境を破壊したり、健康を害してしまうなんてことは、できればないほうがいい。
そんな思いを込めて石けんを作っています。
このアボカドベビー石けんは、アレルギー性が低いと言われているアボカドオイルで作りました。
原材料はすべてオーガニック。パームオイルは使用していません。(パームを使用しない理由はこちら→☆)
鮮やかなイエローグリーンはアボカドオイルのそのままの色で、重金属系のカラーラントなどの着色料は一切入れていません。
安全なだけじゃなく、お子さんがお風呂に入るのが楽しみになってくれるように、可愛いアヒルさんを入れました。
アボカドオイルのグリーン色は、クロロフィルという葉緑素なので、時間が経ったり日の光に当たると徐々に褪色していくのですが、そんな自然に変化していく風合いも美しくて好きだったりします。
私はもともと出身大学が理系だったり、養護教諭の経験とアロマの資格など、それなりには勉強してきたつもりですが、まだまだこれから医薬品医療機器等法の安全管理や品質管理基準など、勉強しなくてはならないことがたくさんあります。
そして、安全性においては、アレルギーテストなど外部検査機関に検査してもらい、きちんと安心安全と確認された石けんをお届けしたいと思っています。
また、化粧品の製造所は都道府県ごとにいろいろと厳しい基準があります。
工房設立にあたっては、本当は勝山の雰囲気のある古民家で石けん作りをしたかったのですが、異物混入が絶対NGな化粧品製造業となると、すき間や虫の多い古民家はとてもハードルが高く、物件探しに要した期間が2年以上。
条件に見合う物件がなく、あきらめかけた頃に地元の方が高台の素敵な土地を紹介してくださり、思い切ってそこに新築の工房を建てることにしました。
しかしながら新築ですから、かかるお金も半端ないです・・・。
でも、銀行や商工会の皆さんが、「良い石けんを届けたいという」私の思いに賛同してくださり、なんとか融資を受けられることになりました。
最初は子育てしながら、時間の空いたときに石けんつくって販売できたら〜なんて夢みたいな事を考えていましたが、始めてみたらとんでもないことでした(笑)
きちんと化粧品製造業・化粧品製造販売業を取得して、皆さんに良いものをお届けできるように、本気の本気で形にしていきたいと思っています。